願書とともに提出を求められるのがエッセイ (Essay、Personal Statement)です。
エッセイとは、大学にあなたのことを知ってもらうための、またその大学に入学したい熱意を伝えるための、自己紹介文です。
エッセイは、合否を左右するとても重要な書類です。
私立大学はとりわけエッセイを重視します。
Dartmouth Collegeなど多くの私立大学では、出願書類の中で真っ先にエッセイが読まれるほどです。
エッセイは、成績やTOEFLといった数字では表せないあなたの個人的な経験、価値観、意欲、目標などをアピールする手段です。
あえて「いい作文」を書こうとするよりも、自己アピールのための最大のチャンスと考えて、自分らしさ・ユニークさを存分に打ち出した作文をめざすようにしましょう。
エッセイのトピックは、書き手の自由に委ねられる場合と、それぞれの大学から質問や課題が与えられる場合とがあります。
大学から指定されるトピックは、以下のタイプに大別されます。
「本学に入学するにあたって、あなたの資質やこれまでに成し遂げたことについて述べてください」
「人間関係においてあなたは何を最重視しますか。あなたと最も近しい人はだれですか。その人と関係が近いのはなぜですか」
「あなたの尊敬する人物(父母、歴史上の人物、小説の登場人物でもかまわない)はだれですか。またなぜですか」
「自分にとって重要な経験、成し遂げたこと、人、出来事を詳しく描出してください」
「自分にとっての関心事(国際的、社会的、個人的いずれでもかまわない)を論じてください」
「あなたの育った環境と、それがいかにいまのあなたを形づくっているのかを述べてください」
「あなたと近しい人が、あなたから見て間違っていることをしたとき、あなたはどのような行動をとりましたか。状況を描出してください」
「あなたの教育目標を達成するために、なぜ本学に入学したいのか述べてください」
「あなたは本学と在学生に対して、何を、どのように貢献できますか」
「過去、現在、未来を問わず、また、実在するしないにかかわらず、 1年間一緒に過ごしたい人を挙げるとしたら、それはだれですか。またなぜですか」
「あなたの未来を描写してください」
「あなたはいま、300ページの自伝を書き終えました。その217ページ目を提出してください」
このように、大学によってさまざまなトピックが与えられますが、トピック自体は漠然としたものが多く、書き手の解釈で自由に展開できるような内容になっています。
公立よりも私立のほうが、そして名門大学になればなるほど、エッセイを重視します。
というのも、レベルの高い大学ほど、学業面では同じくらいのレベルの高校生がしのぎを削るので、学業以外の要素で差をつけなければならないからです。
したがって私立の名門大学にはとくにユニークなトピックが多く見られます。
なぜ大学はエッセイを課すのかというと、これまで述べてきたように、「ユニークな人材」が欲しいからです。
学校の成績やSAT・TOEFLテストの結果からだけではうかがい知れない要素を、エッセイを通して見いだそうとするわけです。
逆の見方をすれば、成績やTOEFLスコアが少しくらい悪くても、エッセイが魅力的であれば、合格のチャンスは高くなるということになります。
パフォーマンスを大切にするアメリカの大学からすると、勉強は苦手でも表現力はスバラシイという高校生は、とても魅力的な人材なのです。
また大学はエッセイを通して、文章力・構成力だけでなく、あなたがどんなことに興味をもっているのか、どれだけしっかりした思想をもっているのか、またどれだけ成長しているのかをも、見てとろうとします。
文章力や構成力は、ある程度テクニックによってどうにかなります。
しかし興味や、思想ともなると、これは一朝一夕で身につくものではありません。
したがってエッセイではごまかしやウソがききません。
入学審査官は何万通ものエッセイを読んでいるプロですから、嘘やたてまえはすぐ見破られます。
大切なのは、何といっても「あなた自身である」こと。
たとえば尊敬する人物を書く場合でも、あくまで主体は「あなた」であって、その人物が偉大であろうがなかろうが、あなたの人物像がくっきり表れてこなければなりません。
そして、いかに自分が"Special"であるかを存分にアピールするのです。
たとえば「アメリカ留学をするのはわが家系では自分が初めて!」というのでもOK。
楽器を弾ける、部活の主将である、級長を3年間務めた、小中高12年間一度も学校を休んだことがない、など、ほかの人にはない資質をじっくり探ることから作文は始まります。
アメリカではエッセイを書く作業は、「自分発見の旅」にたとえられます。
家族や友人、カウンセラーに、あなたのどんなところがSpecialだと思うのか聞き出してみるのもいいでしょう。
大学出願においてエッセイを書かなければならないことは、アメリカの高校生はみんな心得ています。
またそのエッセイが、大学――とくに私立大学や名門大学――の合否に大きく影響するということも、よくわかっています。
ですからよりよい大学をめざしている高校生は、できるだけ9年生の時点から、いろいろな課外活動に参加したり、学外の行事やボランティアなどで積極的に活動したりして、エッセイのネタづくりをします。
また文章力や表現力をつけるために、読書も欠かせません。
毎日、新聞に目を通して、問題意識を養っておくことも大切です。
このように日々の積み重ねが、よりよいエッセイを書くためには不可欠なのです。
とはいうものの、Seniorになってエッセイづくりに本腰を入れる、という高校生が多いのも事実です。
その時点での「ありのままの自分」が表現されていればいいのであって、何年も前からエッセイを念頭に置いて行動することもありません。
大切なのは Be Yourself !です。
肩の力を抜いて、あなたらしく日々を過ごしてください。
合否に大きく影響するエッセイですから、十分な時聞をかけて書きます。
アメリカの高校生はJuniorとSeniorの聞の夏休みに、エッセイのトピックを考え始めます。
日本の高校生の場合でも、高3の夏休みにアイデアをいくつかまとめ、夏休み明けから日本語での下書きにとりかかり、出願の1〜2か月くらい前に英訳にとりかかり仕上げる、というのが理想的なペースです。
都合、 3〜5か月くらいの作業になります。
エッセイを書くプロセスは、大まかには以下のとおりです。
いままで成し遂げたこと、他人と比べて際立ったこと、尊敬する人、あこがれの人物、好きな本や映画、いままで最もつらかったこと、最もチャレンジしたと思えること、将来の夢、あなたにとって重要な課外活動、あなた自身が思うあなたのスゴイところ―――などを書き出します。
ともかく何でもいいので、できるだけ過去までさかのぼって、あなたの経験や思ったこと、感動したことをたくさん書き出し、それらから、あなたのユニークさは何なのかを探ってみてください。
上に書き出したことから、エッセイに盛り込む内容を絞り込みます。
複数のことを書いてもいいのですが、その場合、順序には注意します。
できるだけ一貫性をもたせることが大切。
そしてトピックを決めます。
トピックとは、いってみればエッセイのテーマです。
上に書き出したことは、そのテーマを表現するためのエピソードだと考えましょう。
トピックは、あくまでパーソナルなものです。
あなたにとっておもしろい、エキサイティングだと思えることを、熱意をもって書くのが大切。
宗教、政治、テストスコアなどはエッセイのトピックとしては適しません。
宗教 (「キリスト教とイスラム教のいずれがすぐれているか」など)や政治は扱うことが大きすぎて、パーソナルなものではなくなってしまいます。
またGPAやSAT、TOEFLスコアをエッセイで書く必要はありません。
エッセイではあくまで数字「以外」のことをアピールすべきです。
何よりもこうしたスコアの悪いことをエッセイで言い訳されると、大学はとても嫌がります。
自分についてネガティブなこともトピックとしては適しません。
ネガティブなことを克服した、という内容ならOK。
トピックを自分で考えるのは、最初は大変かもしれませんが、できるだけたくさんの大学のエッセイの課題に目を通し、それぞれについて思いをめぐらすなどして練習を重ねることで、あなたらしさを自在に表現できるようになります。
そのためにも、エッセイライテイングの下準備にしっかり時間をかけることが大切です。
アウトラインとは、いわば「目次」です。
英作文においては、目次のつくりかたが、だいたい以下のように決まっています。
1.Introduction 導入
A. Thesis Statement テーマ: 1文
2. Body 主文
A. Supporting Example #1 裏づけ1: 1段落以上
B. Supporting Example #2 裏づけ2: 1段落以上
C. Supporting Example #3裏づけ3: 1段落以上
3. Conclusion 結論:1〜2文
この目次のつくりかたをBME(Beginning、Middle、End)といい、オーソドックスな英文の構成です。
このようなつくりで書かれていれば、読み手にはわかりやすくなります。
「裏づけ」とは、上の「1」で書き出したエピソードにあたります。
そして結論ではテーマを再確認します。
このアウトラインづくりにしっかり時間をかけるのがポイント。
文法や長さを気にせずに、アウトラインに沿って書きます。
この段階ではあまり考え込まないで、勢いに任せて書くのがいいでしょう。
また書き終えたらカウンセラーにチェックしてもらうこと。
できれば第一稿を書いて何日かを経てから、「読み手の立場」で読み直し、Reviseします。
必要に応じてReviseを繰り返します。
英作文の原則は、結論を先に書くことです。
この結論がすなわちテーマで、最初の一文で読者の心をそのテーマにひきつけます。
そして以下にそのテーマをサポート、発展させるエピソードや考えを具体的に述べ、最後にもう一度テーマを確認するという書きかたです。
最初の一文は、シンプルかつインパクトのあるものがいいでしょう。
一番の工夫のしどころです。
日本の「起承転結」のように結論をおしまいにもってくるような文章は、アメリカ人はあまり慣れていません。
しいていえば「結転転結」という構成が、アメリカではよい作文だということになります。
エッセイに正しいも間違いもありません。
しかし、何が言いたいのかわからないエッセイは魅力に欠けます。
書きたいことはいろいろあるでしょうが、「あれもこれも」ではまとまりがありません。
テーマ、すなわち言いたいことを一つに絞り、それに一貫性をもたせることが大切です。
一貫性をもたせるには、接続詞(later,furthermore,additionally,moreoverなど)
を使うと便利です。
第二段落以降、それぞれの段落の最初の一文に接続詞を付してみて、一貫性があるかどうかを確認しましょう。
そしてテーマが何であれ、あくまで「あなたのユニークさ」を際立たせること。
アメリカの大学は、他の出願者に比べてあなたがどのような点でユニークなのかを、エッセイで示してほしいと望んでいます。
エッセイはあなたにしか書けないものです。
できるだけ自分の言葉で書くこと。
むずかしい単語や表現、構文は不要です。
シンプルな表現を心がけましょう。
そのためには否定形・受動態を避け、また暖昧な表現 (rather,quite,somewhat,probably,possibly,more or lessなど)もできるだけ使わないようにしましょう。
大学指定の用紙あるいはA4サイズの白紙に、パソコンで見やすく仕上げます。
手書きは好ましくありません。
最近ではPDF形式で、パソコンで入力できるようにしている大学も増えてきました。
A4サイズの白紙を用いる場合は、1枚にまとめ、左右上下とも1インチ(約2.5センチ)の余白を取ります。
本文は長ければシングルスペース、短ければダブルスペースとし、本文と氏名の聞はトリプルスペースとします。
フォント(字体)の種類を選べるのなら、できるだけ読みやすいフォント(Centuryなど)を使います。
全体の長さは400〜500語くらいが適当で、一見して読みやすそうな体裁に仕上げるよう心がけます。
aやtheも1語と数えます。
そして最後には必ずスペルチェックをし、カウンセラーなど第三者にチェックしてもらいましょう。
アメリカの高校生にしても、まったくの独力でエッセイを書くなんてことはありませんし、大学のほうも、必ずガイダンスカウンセラ一、英語の先生、親など第三者の手が加わっていることを了解しています。
エッセイのサンプルを閲覧できるサイト
以下のWEBサイトでは、実際のエッセイのサンプルを閲覧できるほか、エッセイの書きかたについてのアドバイスも得られます。
サンプルはすべてアメリカ人の手によるものですから、これらと同レベルのエッセイを書かなければならないというわけではありません。
それでもアメリカの高校生はどんなことについてエッセイを書いているのか、ある程度うかがい知ることはできるので、チェックしてみましょう。
Accepted.com | http://www.accepted.com/ |
Admissions Essays | http://www.admissionsessays.com/ |
College Board | http://www.collegeboard.com/ |
EssayEdge.com | http://www.essayedge.com/ |
Teen Ink | http://www.teenink.com/college_guide/college_essays/ |