F アメリカ人が大学院へ行く理由

 

避けられない大学院教育

 

もともとリーダーを養成するリベラルアーツ・カレッジから始まったアメリカの大学は、時代の流れとともに情報・技術が発達し、医者・弁護士などプロフェッショナルを養成する必要性が生じ、また、その他の分野でも、より高度なことを勉強したり研究したりする必要ができたため、リベラルアーツ・カレッジを中心 に、エンジニアリング専門の学部や教師養成の学部、そして大学院を増設させていきました。

 

現代のようにすべてが高度に発達すると、人聞は一生勉強を続けてもまだ足りないということになってしまいますが、大学で一人前の人間として一定の能力を身につけ、さらに高度な人材として認められ、かつよいお給料をもらうためには、大学院教育は避けられない状況になってきています。

 

実際、日本でも、理系はすでに大学院に行かなければ一定レベルの技術の能力にはとても足りませんし、医学部なども六年制になっています。

 

終身雇用で、入社してから訓練するという方式をどの企業もなかなかとれなくなってきたいまでは、ますます大学院教育を活用せざるを得なくなります。

 

アメリカでは、たとえば教育という分野でも、先生のライセンスを一度とって、そのままずっともち続けることはできません。

 

先生たるもの、つねに勉学を重ねて、生徒のニーズに応えるのは当然のことです。

 

州によって違いがありますが、ミシガン州では先生になって最初の6年間は一人前の先生とは見なされず、 3年以内に10単位、次の3年以内に8単位を大学で履修するか、あるいは大学院修士課程を修めなければ、一人前のプロの先生になれません。

 

一人前の先生になっても、5年ごとに6単位ずつ履修していかなければ、ライセンスをもち続けることはできません。

 

この6単位は、大学のものでも大学院のものでもかまいませんが、同じ科目を繰り返してとることはできず、またどんなベテランであっても5年ごとに必ず6単位は修めなくてはならないルールになっています。

 

日本の教員免許についても、このようなアメリカ方式を検討する姿勢が見えます。

 

大学院に行くなら、あるいは留学するなら、2年間の休職を認めるといった制度も整いつつあります。

 

より自分を高く売るために

 

また、仕事を変えることによってポジションやお給料を上げていくというのが主流のアメリカでは、勉強して、より高度な技術や知識を身につけることが、より自分を高く売るチャンスにもなります。

 

大統領が変わると(とくに所属する政党の異なる大統領になったとき)政府の高官やスタッフもけっこう入れ替わりますが、クビになった役人たちは、他の職業に移る者のみならず、大学院で修士号や博士号を得ることに専念し、頭と中身をみがき、爪をとぎ、次の大統領のときは、またスタッフとして売り込むべく用意をする人たちも大勢います。

 

自分で何かを発明したり、会社を起こしたりしてアメリカンドリームを達成するのが好きなアメリカ人、また、会社やポジションを変えながら、いつか何十万ドルものお給料を得る企業のトップにのぼりつめるのが好きなアメリカ人、そうして、そういうアメリカが好きで世界からアメリカをめざしてやってくる移民たち。

 

冒頭に紹介した「人生に迷ったり自分を高く売りたくなったりしたら大学や大学院に戻る、隙あらばベンチャーを狙う、最後に入る会社に一番自分を高く売りたい」という言葉は、本当にアメリカを象徴した文句です。

 

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