アメリカにある4,000にも及ぶ大学は、現在では次の4種類に大別できます。
@総合大学 | 大学院に中心を置いている |
Aリベラルアーツ・カレッジ | 全人教育に重点を置いている |
B普通の州立大学&コミュニティ・カレッジ | 州民の教育が中心 |
C芸術系大学 | 音楽やアートを専門に教育する |
Universityと呼ばれる総合大学は、大学院にその中心があります。
先生は学者・研究者が多く、自分の研究に専念し、高度な学問を学生に教えたいと考えているため、どうしても大学院の課程ばかりを教えたがります。
したがって大学レベルの科目はTA(Teaching Assistant)と呼ばれる大学院生の助手が教えることもしばしばです。
これら総合大学は、日本の「学部」にあたる、いくつかの「スクール」や「カレッジ」から成り立っています。
スクールとカレッジの集合体が、「総合大学」です。
したがって総合大学は、学生数が1万人を超すなど概して規模が大きく、それゆえにカリキュラムが多様で、設備も充実しています。
次に紹介するリベラルアーツ・カレッジが4年間での一般教養分野の教育を中心としているのに対し、総合大学は大学院レベルでの研究や、より専門的・実践的な教育に重点を置いているのが大きな特徴です。
総合大学には私立と州立とがあり、私立総合大学の多くは、もともとリベラルアーツ・カレッジであったのがいろいろな学部を加えて大きくなったものです。
州立の総合大学はたいていその州のトップクラスの高校生を入学させています。
さて、総合大学は規模が大きいために、学生一人ひとりへの親身なサポートが期待できないため、英語が苦手な留学生にとってはかなり大変です。
リベラルアーツ・カレッジのようなフレンドリーな雰囲気はなく、とくに日本の高校を卒業してすぐにこういう総合大学に入ると、大海に放たれたような心もとなさを感じます。
カリキュラムが多彩で、設備が整っているというのは総合大学の大きな魅力ではあるので、しっかり時間をかけて事前の準備をすれば、1年目からの入学も考えられるでしょう。
また、最初の2年間をリベラルアーツ・カレッジで過ごし、 3年目から総合大学に編入するか、大学院生として総合大学で学ぶという進路も考えられます。
アメリカの大学がそもそもハーバード大学に始まり、リベラルアーツ・カレッジとして創立されたことは前述したとおりです。
国家をつくりあげていく礎になる若者を養成したいという目的から、幅広く知識・教養を身につけ、バランスがよくとれていて、リーダーシップをとれるような人になれる教育をリベラルアーツ・カレッジでは行っていたのです。
古いリベラルアーツ・カレッジが長い年月をかけて大きな総合大学に変身していくものも多くありました。
ハーバード大学などはその代表的なものです。
一方、古くに設立されたものでも、伝統を守ってそのままリベラルアーツ・カレッジとして留まったものもたくさんあります。
Amherst Collegeという学校は、1821年創立の古い大学ですが、いまだに小規模なリベラルアーツ・カレッジで、クーリッジ第30代アメリカ大統領をはじめ、多くの有名人を送り出しています。
古くは内村鑑三や新島襄などが学び、新島襄がこの大学をモデルにして同志社大学をつくったのはよく知られています。
新しい時代になってからできたリベラルアーツ・カレッジもたくさんあって、いまでは全米に約600のリベラルアーツ・カレッジがあります。
レベルは、ハーバード大学に匹敵するものから、ごく普通のレベルのものまであり、いずれも研究よりも「教育」に力を入れています。
ほとんどは寮制で、大自然に囲まれたキャンパスにあり、都会的刺激はまったくなし。
在学生数が500人〜3,000人くらいまでと小規模で、 90%が私立です。
学生一人ひとりの自由な探究心を広げ、可能性を引き出しながら、全人的な教育をするのがリベラルアーツ教育の特徴で、これはアメリカ大学教育の中枢をなしています。
専門性の高い研究よりも、幅広くいろいろなことにチャレンジしなさい、という教育です。
先述した「子どもが18歳になったら家から出して、寮生活をとおして親離れをさせるのが大学の役割」「大学で学ぶのは分析力・判断力・決断力」という理念がまさに実践されているのが、このリベラルアーツ・カレッジであるのです。
ここに紹介するのは、州立大学でも、大学院教育を中心とする総合大学とは、レベル、役割ともまったく異なります。
ここでいう州立大学は、アメリカが独立後、農業や畜産、工業などの発達に伴い、このような職業に携わる人材を養成する必要から設けられました。
したがって、仕事に直接役立つ実学中心の教育をめざしています。
このような州立大学では、地元の住民なら学力が高くなくても、望めばだれでも受け入れてくれ、授業料も州の住民には非常に安く設定されています。
コミュニティ・カレッジは、その地域の住民を対象としている公立の二年制大学です。
地域の住民にはまったくの無料か、無料に近い学費で教育をしています。
教育内容は、職業訓練校とカルチャースクールが入り混じったようなもので、中学校を卒業したくらいの学力レベルの人を対象としています。
日本の短大とはまったく別の、むしろ専門学校に近い性格です。
高校を出ただけでは就職がむずかしいので職業訓練を受けたい人、四年制大学に行くには学業成績や経済状況が十分でない人などを受け入れていて、レベルの高いコミュニティ・カレッジというものはありません。
合格率はどのコミュニティ・カレッジでもほぼ100%です。
コミュニティ・カレッジは基本的には、卒業後すぐに仕事場に出られるように、技術(手に職)をつけることを目的にした教育を行っています。
一般教養の課程もありますが、内容がかなりベーシックなものが多く、またあくまで地域住民、とくに低所得者やマイノリティの人たちの労働力を強化することに力点を置いているので、どうしても日本人留学生には馴染みにくいところがあります。
多くのコミュニティ・カレッジに在学している人の平均年齢は30歳以上です。
夕方や週末だけクラスに出る「パートタイム」の学生が多いので、寮のある大学はとても少なく、もちろん課外活動にも力が入れられていません。
いわゆるキャンパスライフは、コミュニティ・カレッジでは望めません。
また、学生数に比べて教授の数も少ないため、リベラルアーツ・カレッジほどのサポートは受けられないという難点もあります。
コミュニティ・カレッジを卒業すれば準学士号 (Associate Degree)を得られますが、その後の四年制大学への編入は、なかなか簡単にはいきません。
というのもコミュニティ・カレッジの教育レベルが低い、あるいは職業訓練に傾きすぎているために、編入先の四年制大学では自大学の卒業単位として認めないとするケースが多いからです。
全米的に見ると、コミュニティ・カレッジを卒業した人が四年制大学に編入している率は25%です。
学費の安さでコミュニティ・カレッジにひかれる人も少なくありませんが、以上のような事情をよく考え、コミュニティ・カレッジが自分に向いているかどうかを、よく検討しなければなりません。
アメリカにも日本の音大や美大と同じような芸術の専門大学があります。
その多くはニューヨークやボストンなどの都心にあって、小さいころからピアノを弾いたり絵を描いたりしてきた、個性の強い人たちが集まります。
日本の芸大と同じく、音楽や演劇ならオーディション(Audition)を受けなければなりませんし、美術系の人はポートフォリオ (Portfolio)と呼ばれる作品を提出しなければなりません。
また、音楽全般とか美術全般とかいうのではなく、バイオリンやグラフィックデザインなど、ある一つの分野を選んで入学審査を受け、その分野のみを勉強することになります。
ニューヨーク市にあるアート系の大学は、Pratt Institute、Parsons School of Designなどが有名です。
また、Fashion Institute of Technologyというファッション専門の大学もあり、世界中から学生を集めています。
(US News.com参照)
Art Center College of Design (CA) | Massachusetts College of Art (MA) |
Art Institute of Boston (MA) | Milwaukee Institute of Art and Design (WI) |
Berklee College of Music (MA) | Montserrat College of Art (MA) |
Boston Conservatory (MA) | Moore College of Art and Design (PA) |
Califomia College of Arts and Crafts (CA) | New England Conservatory of Music (MA) |
California Institute of the Arts (CA) | Otis College of Art and Design (CA) |
Cleveland Institute of Art (OH) | Parsons School of Design (NY) |
Cleveland Institute of Music (OH) | Pratt Institute (NY) |
Corcoran College of Art and Design (C) | Rhode Island School of Design (RI) |
Curtis Institute of Music (PA) | San Francisco Art Institute(CA) |
Fashion Institute of Technology (NY) | San Francisco Conservatory of Music (CA) |
Juilliard School (NY) | Savannah College of Art and Design (GA) |
Maine College of Art (ME) | School of the Art Institute of Chicago (IL) |
Manhattan School of Music (NY) | School of Visual Arts (NY) |
Maryland Institute College of Art (MD) | University of the Arts (PA) |
ボストン市にも有名な芸術系の大学があります。
中でもBerklee College of Musicという大学は、ジャズの学校として有名で、日本からもかなり多くの人が留学しています。
このような芸術系の大学は都会に多く、寮の設備も必ずしも完備されていません。
都会の人はクールで、学生は個性の強い人ばかりです。
そのため、英語力も十分でなく、外国生活の体験も少ない日本人学生は、大変ハードな生活をしいられ、ときには自信を失い、個性を潰されてしまうことがあります。
したがって最初から都会の芸大をめざすのではなく、まずは、寮があり面倒見のよい小さなリベラルアーツ・カレッジで2年間を過ごし、そこで英語力をみがき、アメリカでの生活にも慣れ、ポートフォリオづくりをしたりオーディションの準備をしてから、ニューヨーク辺りの専門大学に出て行くというのも、考えるべき一つのオプシヨンだといえます。
そうすれば、挫折することもなく目的を達成できるでしょう。
リベラルアーツ・カレッジでは、芸術の経験がなくても、まったくの初歩から丁寧に教えてくれます。