準備編で高校生がアメリカの大学に合格するのに大切な六つの要素("The Significant
Six")について述べましたが、編入生に適応させてみましょう。
編入生は、高校3年間の成績証明書に加え、大学の成績証明書を提出します。
高校の成績より大学の成績の方が重視されます。
大学レベルでどのくらいの成績を取れているかは、その出願者の学力を判断するために重要な要素であるからです。
日本の大学の成績は、英文成績証明書においてはABCDで評価されることが多いのですが、大学によっては、Aより上の成績としてAAやSといった評価をするところや、不可の成績をDとしてわざわざ表記しないところもあります。
いずれにしても、最低C平均の成績が必要ですが、できればB平均(GPA3.0)以上の成績がほしいところです。
エッセイは学業成績やTOEFLといった数字では表せないあなたの個人的な経験、意欲、目標などをアピールするものという点は、アメリカの大学入学で高校生に求められていることと共通しています。
アメリカの大学は、その学生が学業不振や素行不良が原因で、現在在学している大学を辞めて編入するのではないということを、願書や他の書類を通じてまず確認します。
そのうえで、課題エッセイとして「なぜ在学している大学を辞めて出願する大学に編入したいのか」について書くことを求めることもあります。
その場合、日本の大学への不満や批判など否定的なことを書き連ねるのではなく、編入することによってさらに自分の可能性が広がることや、目標にいっそう近づくことを能動的に書きましょう。
第二学士号をめざす場合でも、大学レベルでもう一度勉強したい理由や目的を意欲的に表すとよいでしょう。
社会人としての経験がある場合は、現役大学生より多くの経験をもっていることを強みとして、社会人ならではトピックや、社会人でしか書けないような内容に仕上げるのもアピールになります。
大学在学期間の長短によって大学の先生から2通、または高校と大学の先生から各1通書いていただきます。
3通の推薦状が必要になる場合もありますが、3通目は大学の先生からいただくのがよいでしょう。
大学の在学期間が1年以下であれば2通のうち1通を高校の先生からいただくのも理にかなっていますが、1年以上であれば大学の先生から2通いただくのがよいでしょう。
高校時代とは異なり大学となると、ゼミを除く講義は大人数で、先生方と親しくなる機会はあまりないのが現実です。
そのような状況で効果的な推薦状を書いていただくのは難しいというのは、誰にでも共通する悩みです。
そこで、好きな授業の先生や良い成績を修めた科目の先生、または好感をもっている先生などとなるべく親しくなるように心掛けましょう。
その先生が教える分野のことを集中的に勉強し、先生に質問に行ったり、意見を述べたり、議論を投げかけてみたりすることによって次第に信頼関係を築くことができるはずです。
そして先生が推薦状を書きやすいように、留学の動機や自分の長所・強みなど、できるだけ「ネタ」となる情報を提供するように心がけましょう。
社会人が編入学をめざす場合、職務経験の期間の長短にもよりますが、上司と大学の先生から各1通書いていただきます。
大学を卒業してすでに5年以上経っている場合は上司から2通でもよいですし、逆に1、2年しか経っていない場合は、大学の先生から2通でも不自然ではありません。
上司に書いていただく場合、アメリカの大学に提出する推薦状をお願いするということが退職の意向を示すことにもなりますので、コミュニケーションをよく取って協力していただく必要があります。
また、忙しい上司の方には推薦状の内容になり得る情報を書面にきちんとまとめてお渡しするなどして、推薦状をお願いする立場の社会人として誠意を示しましょう。
大学生になると高校時代より活動の種類や範囲が広がります。
体育会、サークル活動、ゼミ活動、音楽・芸術活動、大学祭実行委員会、地域活動、ボランティア活動、アルバイトなど、何らかの活動に参加している人がほとんどでしょう。
願書に課外活動
(Extracurricular
Activities)について記述する際に、大学生になってから始めた活動、または高校生から引き続き大学生になっても行っている活動を強調すべきです。
課外活動が高校時代のものだけでは、アメリカの大学は、あなたのその後の経験の積み重ねや人間的成長をうかがい知ることができないからです。
日本の大学生のほとんどが経験しているアルバイトもアピールの良い材料になります。
厳しい実社会で社会人と一緒に働く経験は、エッセイのトピックにもなり得るでしょう。
しかし、願書の中にアルバイトの時間数を記す項目がある場合、その時間数があまりに多すぎると勉学を怠っていると判断されかねませんので、注意が必要です。
社会人が編入学をめざす場合、大学時代に参加していた活動やアルバイトに加え、社会人になってから始めた社内のサークル活動、地域活動、ボランティア活動、趣味などを記述します。
フルタイムでの職務経験は課外活動という意味合いにはなりませんが、別の項目で願書の中で記しておくとよいでしょう。
編入学の場合も、留学生である限りTOEFLスコアの提出を求められます。
しかしSAT・ACTスコアについては、留学生であっても新入生の出願者には受験を義務づけている大学も、編入生に対しては不要とする場合が多いという特徴がみられます。
名門校やトップ校は、編入生に対してもSAT・ACTを課すところがありますが、アメリカ人の編入出願者は、高校生の時に受験したSAT・ACTスコアを提出します。
大学生になってから編入のために再度SAT・ACTを受験するということはありません。
しかし、日本の大学からアメリカの大学ヘ編入しようと考えた場合、SAT・ACTを受験している人はほとんどいないため、名門校やトップ校を狙いたい場合は、新たにSAT・ACTを受験する必要があります。
大学の成績が芳しくない場合、SAT・ACTを課されていなくても、あえて受験して良いスコアが出ればそのスコアを提出するという方法もあります。
アメリカの大学は出願者の能力を多角的に判断したいと思っていますので、これらのStandardized Testsで良いスコアを取ることは、大学の成績をカバーする材料になり得ます。
ただし、準備編で述べたように、数学セクション以外の英語に関するセクションは、日本人受験者はなかなか太刀打ちできません。
こう考えると、いかに大学で良い成績をとっておくことが大切かということが実感できます。
面接については、準備編で述べたことが編入生にもほぼ当てはまります。
加えて、なぜ現在在学している大学を辞めて編入したいのかについては面接官の関心事です。
エッセイを通じてすでに述べている場合は、そのことを簡潔に口頭で説明できるようにしておきましょう。
エッセイでそれに触れていない場合、必ずこの質問に対して答えられるように準備しておく必要があります。
編入の理由として日本の大学への不満や批判を全面に出さず、自分自身の成長のための編入ということを効果的に伝えます。
第二学士号取得のための編入をめざす場合、大学院ではなく大学レベルでさらに勉強したい理由を述べられるようにしておきましょう。
社会人の場合、面接は人間としての成熟度、仕事を通じてのリーダーシップや問題解決能力をアピールする良いチャンスです。
仕事でやってきたことを整理し、そのなかでどのような能力やスキルを発揮できたかということを簡潔に英語でまとめておくことが面接の準備として重要なことです。
以上、アメリカの大学に合格するのに大切な六つの要素("The Significant Six") において編入生が留意すべきことについて述べました。
これらのことを踏まえ、実際に出願するまでのスケジュールを計画するわけですが、編入生の出願締切日は新入生に比べて遅いのが一般的です。
新入生の出願締切日が1月初めの大学でも、編入生の場合、3月に設定しているところが多いようです。
時間的に余裕があるように思えますが、完成するのに時間のかかる推薦状やエッセイをはじめ、さまざまな必要書類を用意しているうちにアッという間に時間が経ってしまいますので、何ごとも前倒しに準備を進めていくのが得策です。
3月が締切日であっても、準備が整えば1月、2月に出願しておくと安心です。
大学によっては新入生の合否結果を全て出してから編入生の審査をするため、合否がわかるのが5月という場合もあります。
一方、早く出願すれば早く合否結果を出す大学もありますので、早めに出願して1校だけでも合格をもらっておけば安心です。
最後に、根本的な留意点を述べておきましょう。
仮に、日本の大学に2年間在籍していても、取得している単位数が24単位未満であれば新入生の出願要件となります。
つまり、出願締切日、SAT・ACTの要件、エッセイの課題などが新入生と同じものになります。
24単位というのはアメリカの大学においてFull-time Studentsが1年間分に取得しなければならない最低単位数です。
日本の大学に数年間在籍していても、何らかの理由で24単位未満しかもっていない人は注意が必要です。
その理由を出願時に説明しなければならない羽目にもなってしまいます。
しかし、24単位未満であっても入学後に編入単位として認めてもらうことは可能です。
いずれにしても、大学に在籍している限り、しっかり単位を取って、良い成績を修めておくということが鉄則です。