1 | アメリカの教育や大学のシステムをしっかり理解 |
2 | 大学の規模・種類・地域などから10〜20の大学をピックアップ |
3 | ピックアップした大学のWEBサイトにアクセスしてカタログ請求 |
4 | 個々の大学のWEBサイトとカタログをよく読んで比較検討 |
5 | 「挑戦校」「実力相応校」「すべりどめ校」の3レベルに分け、4〜6大学に出願 |
留学についてのあらましを理解したら、いよいよ志望校について考え始めます。
アメリカの高校生は、Juniorの秋(11月)くらいにガイダンスカウンセラーと相談しながら大まかな志望校のリストアップをします。
Seniorになるとエッセイの準備などで忙しくなるので、できるだけ早いうちに志望校選びをスタートさせたほうがいいからです。
日本の高校生も、できるだけ早い時期に、具体的な大学の名前までは決めなくても、どんな大学に行きたいのか、イメージづくりをしておくといいでしょう。
たとえば、
・大きな大学がいい? 小さな大学のほうがいい?
・フレンドリーな雰囲気がいい? 厳しい環境に飛び込んだほうがいい?
・都会と田舎ではどちらを望む?
・共学がいい? それとも別学?
・寒いところがいい? 暖かいところがいい?
といったイメージです。
最初から「○○Universityにしか行きたくない」といった決めかたは好ましくありません。
志望校選びを含め進学準備を始めるのは、早ければそれにこしたことはありませんが、かといって勇み足をする必要はありません。
高3の夏休み(アメリカの高校生がSeniorに進級するころ)くらいから本格的な準備を始められれば大丈夫です。
また大学選びは、前章に紹介した六つの項目〔学校の成績、エッセイ、推薦状、課外活動、テスト、面接〕それぞれに力を注ぎながら、同時進行で行うことになります。
成績やテストスコアが上がれば志望校も変わってきますから、臨機応変に、そのときどきの状況に応じた大学選びをするようにしましょう。
志望校選びを始めるにあたって、まず、以下のポイントで指針をたてます。
第U章で紹介したように、アメリカの大学は、
・大学院レベルの研究に力を入れている「総合大学」
・大学4年間で全人教育を行う「リベラルアーツ・カレッジ」
・州民であればだれでも入学させる「普通の州立大学」と「コミュニティ・カレッジ」
・アートや音楽を専門に教える「芸術の専門大学」
この4種類に大別されます。
高校を卒業したばかりの人に適しているのはリベラルアーツ・カレッジであるのは前述しました。
ですからまずはリベラルアーツ・カレッジから大学を選んでいくのが、一般にはよいと思われます。
英語が得意で、しっかり自律できるのであれば総合大学をめざしてもいいでしょうし、小さいころからアートにくびったけ、という人は芸術の専門大学を視野に入れてもいいでしょう。
もちろん、リベラルアーツ・カレッジと芸術大学を併願してもかまいません。
共学か別学か、というのも考慮に入れたいポイントです。
とくに女子の場合は、女子大を前向きに考えてよいと思います。
アメリカには約60の女子大があり、「セブンシスターズ」やAgnes Scott College、Mills College、Scripps Collegeといった名門女子大学をはじめ、そのすべてがリベラルアーツ・カレッジです。
女子大では、学生同士のきずなが強く、お互い助けあい、刺激しあう環境がつくられています。
とくにリーダーシップを育むことに力を入れているのが女子大の特徴で、アメリカの大統領夫人で大卒の15人のうち8人までもが女子大を出ています。
ヒラリー・クリントン女史もセブンシスターズの一校であるWellesley Collegeという名門の女子大を出て、Yale Universityの大学院に進んでいます。
またWomen's College CoalitionのWEBサイト(http://womenscolleges.org/)では、女子大を卒業した著名人のリストが掲載されています。
男子大学は全米に50ほどありますが、士官学校などちょっと特殊な大学が多いので、志望校の選択としては考えなくてもよいと思います。
Barnard College (NY) |
Bryn Mawr College (PA) ※津田梅子の母校 |
Mount Holyoke College (MA) |
Radcliffe College (MA) ※Harvard Collegeに併合 |
Smith College (MA) |
Vassar College (NY) ※現在は共学。大山捨松の母校 |
Wellesley College (MA) |
リベラルアーツ・カレッジのほとんどが私立大学ですし、第U章でも述べましたように、アメリカの大学は私立大学からスタートしましたので、「良質の大学は私立に多い」というのがアメリカでは常識です。
州立大学は州の税金で運営されていますから、
「州民を優先的に入学させなければならない」
「学生の○%を州民が占めなければならない」
と法律で決められています。
また州立大学のほうが概して規模が大きく、「数の原理」に従う、つまり学生を「十把ひとからげ」に扱うので、私立大学に比べると、一人ひとりの学生に対するサポートや融通性に欠けます。
私立のほうが、よりケースバイケースの対応をしてくれますし、教授も個々の学生のパーソナリティ、弱み・強みをわかろうとしてくれます。
州立大学のメリットは何といっても学費の安いこと。
アメリカの高校生が州立大学を選ぶ最大の理由もこの点にほかなりません。
ただし州民と州外出身者とでは、学費が大きく異なります。
州外出身者は、州民の数倍もの学費を支払わねばなりません。
それでも私立大学に比べるといくらか安価です。
したがって費用の点だけから見ると、州立大学のほうがいいように思われます(ただし州立でもレベルの高い大学は、私立並みの学費が設定されています)。
しかし、
(1)州立大学はあくまで州民への教育を中心にしていること、
(2)州立大学は全体的に規模が大きく、パーソナルなサポートが期待できないこと、
(3)州外出身者は州内出身者よりも何倍もの高い学費を支払わなければならないこと、
などを考えあわせると、とくに高校を卒業したばかりの日本人留学生には、州立大学より小さな私立大学のほうが向いているといえるでしょう。
「アメリカの四年制大学を4年間で卒業する」というのが、一般的な正規留学の考えかたです。
それだけの年月をかけて卒業までこぎつけてこそ、留学の醍醐昧を昧わえるというものですが、みんながみんな、最初から4年を費やすつもりで留学できるわけではありません。
そこでアメリカの二年制大学というのも、志望校の対象として考えてみたいと思います。
アメリカの二年制大学は、
・公立のコミュニティ・カレッジ
・私立のジュニア・カレッジ
に大別されます。
大半はコミュニティ・カレッジですが、すでに第U章で解説した通り、日本の高校を卒業したばかりの人にコミュニティ・カレッジは向いているとはいえません。
私立のジュニア・カレッジは四年制大学の一般教養課程に相当するカリキュラムを組んでいて、卒業するとAssociate Degree (準学士号)を得られます。
ジュニア・カレッジの卒業生のほとんどが四年制大学に進学していますので、望めば3年生として四大に編入できます。
ジュニア・カレッジは規模が小さく、リベラルアーツ・カレッジのように、一人ひとりの学生に親身な指導をすることをモットーにしています。
留学生でも安心して学べる環境づくりがされていますので、最初から四年制大学に進学するのはちょっと自信がないという人には、ジュニア・カレッジは向いているかもしれません。
また四年制大学の中には、2年間の一般教養課程を終えると準学士号を得られる大学があります。
その時点で卒業してもいいし、引き続き3年生に進学してもかまいません。
したがって留学期聞がどうしても2年に限られているという人は、こうした「二年制の課程を併設している四大」を視野に入れて志望校選びをするといいでしょう。
また日本の大学に2年通い、アメリカの大学に3年編入する、というのも一つの選択肢です。
大学の規模とは通常、在学生数のことをいいます。
アメリカには在学生が1,000人に満たない大学から3万人超の学生をかかえるマンモス大学まであります。
学生数が1万人を超えれば大規模大学、反対に3,000人に満たなければ小規模大学、その中聞は中規模大学、と区別できます。
一般に、''University"と名の付く総合大学は規模が大きく、リベラルアーツ・カレッジをはじめ"College"と名の付く大学は小規模です。
マンモス大学のほとんどは州立大学で、アイビーリーグをはじめ名門の私立総合大学の学生数は4,000〜8,000人くらいです。
大規模大と小規模大、それぞれにメリットとデメリットがあります。
・専攻学科や科目の種類と数が多い
・図書館やスポーツ施設などが充実している
・学生のバックグラウンドが多様である(とくに私立の場合)
・スポーツに力を入れていて、全米レベルの選手権も行われる
・1クラスの学生数が多い
・一般教養科目は教授ではなくTA(大学院生の助手)が教えることがある
・教授と接する機会が少ない
・個人指導が期待できない
・大学院生の教育に重点が置かれている
・課外活動でリーダーシップをとれる機会が少ない
・親しい友達ができにくい
・ 1クラスの学生数が少ない
・一般教養科目でも教授が熱心に教えてくれる
・教授やアドバイザーと親しくなれる
・個々の学生が自分の能力やペースにあわせて学習でき、独自なリサーチや論文づくりが奨められる
・課外活動で活躍できる機会が多く、スポーツチームでもレギュラーになりやすい
・キャンパスの雰囲気がフレンドリーで、友達もつくりやすい
・専攻学科や科目の数や種類、教授の数が少ない
・設備が大規模大に比べて劣る
・スポーツにあまり力を入れていない
こうして見ると、大規模大のメリットをそのままひっくり返したのが小規模大のデメリットであり、大規模大のデメリットの逆が、小規模大のメリットであることがわかります。
大きな大学と小さな大学、どちらがあなたに向いているか、というのは一概には言えませんが、アメリカでは一般に、「大学は小規模で」「大学院は大規模で」というのが望ましいとされています。
また「『教育』に力を入れているのが小規模大」「『研究』に力を入れているのが大規模大」というのも通念です。
小規模大学は、あくまで「大学生への教育」に力を入れています。
一人ひとりの学生への指導をきちんと行うために、あえて学生数を増やそうとせず、理想的な学びの環境をつくりあげているのです。
小さい大学=人気がない、というわけではありません。
一方、大きな大学は大学院が中心で、教授は大学院生の研究や論文指導に忙しく、なかなか大学生にまで手が回りません。
とくに1、2年生がとる科目は1クラスの学生数が100人以上になることもあって、質問をしたり意見を言ったりしにくいし、わからないことがあっても聞きづらいというのが実情です。
州立の大きな大学には、留学生には欠かせない相談役であるアカデミック・アドバイザーがいない大学さえあります。
アメリカの高校生の中には、第I章で見たハイジのように、あえて「厳しい環境に自分を置きたい」という理由で大規模大に行く人もいます。
しかし留学生の場合は、よほどの英語力と行動力があって、親身な指導やサポートがなくてもやっていけるというのであれば大きな大学でもいいかもしれませんが、そうでなければ、まずは小さな大学に入学するのがいいでしょう。
2年後に大きな大学に編入するという道筋もあります。
専攻課程であれば学部ごとに学ぶので、大きな大学でもさほど不自由を感じないでしょう。
国土が日本の25倍もあるアメリカは、東部と西部、北部と南部では気候はもちろんのこと、歴史的成り立ちも違いますし、そこに住む人の気質にも差異があります。
教育レベルが高いのは東部から北東部です。
とくにニューイングランド地方(メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州)に伝統ある名門大学が集まっています。
この地方には日本のように四季の移り変わりがあって、冬は雪がたくさん降って寒くなりますが、かえって勉強に励むにはいい気候です。
地域的な希望がとくにないのであれば、まずはニューイングランド地方とその周辺の大学を見ていくとよいでしょう。
南部や西部では新興の州立大学とコミュニティ・カレッジが発達しました。
これらの地域にはマイノリティ(白人以外)が多く住み、フロリダ州やカリフォルニア州はヒスパニック系移民のメッカです。
カリフォルニアにはアジア系移民も数多く暮らしています。
マイノリティの多さが、これらの地域にある大学の学生の人種構成に反映していることは、第I章で見た通りです。
またスポーツをする人にとっては、地域というのは志望校選びに大きくかかわってきます。
ウインタースポーツをしたければ北東部・東部・北部の大学をめざすでしょうし、マリンスポーツに打ち込みたければ西海岸やフロリダ州に志望校を見いだそうとするでしょう。
アメリカの高校生が志望校選びにおいて立地を考える場合、二つのポイントがあります。
一つは、自宅からの距離。
もう一つは、都会か田舎か、ということです。
自宅からの距離については、できれば週末や短い休み(感謝祭休暇など)には家に帰りたいので、車で2〜3時間くらいのところにある寮制大学に行きたい、といった希望をもつ高校生がけっこういます。
まあ、これは留学生にはあまり関係ありません。
都会か田舎か、という点では、一概にどちらがいいとは言えませんが、留学生には田舎のほうが向いています。
アメリカの国土のほとんどは田舎ですし、リベラルアーツ・カレッジのほとんどは都会の喧騒から離れた田舎にあり、落ち着いて勉強に専念するにはもってこいの環境です。
また田舎ではアウトドア・アクティビティ――ジョギング、サイクリング、散策など――に事欠かず、澄んだ空気と青々とした緑は、勉強のストレスを和らげてくれます。
アメリカの大学生活を満喫できるのは、都会よりも田舎の大学のほうです。
もちろん都会にも大学(とくに総合大学や芸術の専門大学が多い)がありますが、都市にはさまざまな誘惑があり、夜遊びばかりして勉強がそっちのけになってしまう恐れがあります。
勉強しなければすぐに退学になってしまうのがアメリカの大学。
とくに高校を卒業したばかりの遊びざかりは、田舎の大学で「勉強のほかにすることがない」という状況に追い込んだほうが賢明です。
もっとも都会にあるのは誘惑ばかりではありません。
アート系を専攻する人にとっては、大都市の美術館やシアタ一、コンサートホールは大きな魅力です。
都会で遊び三昧になる心配をよく考えたうえで、都心へのアクセスに便利な郊外に大学を探してもいいでしょう。
また1・2年を田舎の大学で過ごし、3年目から都会の大学に編入する、というのも、田舎と都会の両方を経験できておもしろいかもしれません。
志望校選びにあたって十分に考慮しなければならないのが、大学のカリキュラムです。
具体的には、
・卒業までにとらなければならない単位数
・一般教養課程の必須科目
・学期制(セメスター/トライメスター/クォーター)
を調べます。
また、専攻が決まっている場合は、
・その専攻学科があるかどうか
・専攻学科の必須科目と選択科目
・専攻学科の教授の数とプロフィール
にも目を配ります。
アメリカの高校生の7割以上が、大学入学の時点では専攻を決めていませんので、専攻を決められないことを心配する必要はまったくありません。
専攻が決まっていなくても、あなたが興昧を感じている分野があれば、それが専攻学科として設けられているかどうかをチェックしましょう。
カリキュラムについてじっくり調べるのは、志望校をある程度絞り込み、カタログを手に入れてからですので、この時点ではカリキュラムに関してはさほど注意しなくてもかまいません。
また英語が苦手な人は、留学生への英語のサポートがある大学のほうが適しているでしょう。
具体的には、ESL(外国人のための英語)の科目を設けている大学です。
なお、このESLと語学学校(ELS: English Language SchoolとかALI: American Language Instituteなどと呼ばれる)とを混同してしまう人が多いのですが、両者は大きく異なりますので、少し説明をしておきます。
ここでいうESLとは、「大学が開講」している、英語を母国語としない「大学生のため」の「科目」です。
大学によってはこのESLの科目の単位も卒業単位として認められます。
一方、語学学校のほうは、日本の英会話スクールと同じようなもので、17歳以上であればだれでも受講できますし、もちろん正規の大学生を対象としたものではありません。
語学学校には、大学付属のものや大学のキャンパスを間借りしているものもありますが、だからといってそこで英語力を上げれば大学に入れるわけではありません。
大学の入学許可とはまったく異なるものです。
アメリカの大学の入学難易度というのは、偏差値がないだけに、なかなか測りづらいものです。
難易度の指針としては、
・入学生のSATスコア平均
・入学生の高校の成績(GPA)平均
・合格率
・TOEFL要求点数
などが挙げられるほか、進学情報機関であるPeterson'sと出版社のBarron'sが、それぞれ5段階で、全米の大学の入学難易度を出しています。
しかしそれらだけでは、あなた個人の合格の可能性までは計り知ることができません。
「自分のTOEFLスコアは○点しかないから、この大学はムリ!」などと決めつけてしまわないこと。
再三述べてきたように、アメリカの大学はある一つの要素だけで合否を決めません。
とくに私立大学はTOEFLやGPAといった数字「以外」の要素にも注目します。
難易度については、実際に出願する時期まではそれほど気にせず、あなたの「行きたい!」という気持ちを優先させて大学をピックアップしましょう。
(Princeton Review)
Massachusetts Institute of Technology (MA) |
Princeton University (NJ) |
California Institute of Technology(CA) |
Yale University (CT) |
Harvard College (MA) |
University of Pennsylvania (PA) |
Stanford University (CA) |
Swarthmore College (PA) |
Duke University (NC) |
Columbia University (NY) |
アメリカの大学の1年度の学費は、私立大学で25,000〜45,000ドル、州立大学は15,000〜35,000ドルです。
全米的に見て、大学の学費は毎年4〜8%くらい値上がりしていて、過去10年での値上がり率は122%にものぼります(College Boardより)。
学費の上限を決めて、それを上回る学費の大学は対象からはずす、という考えかたもありますが、どうしても行きたいという大学には、学費にかかわらず出願したほうがいいでしょう。
合格校がそろった時点で、行くか行かないかを決めても遅くはありません。
教育レベルの高い大学ほど学費も高くなりますが、アイビーリーグなどの名門大学は、"Need Blind"といって、合格者が学費を支払えない場合は、無条件で奨学金を与えています。
留学生に与えられる奨学金は決して多くはありませんが、それでも高校で優秀な成績を修めた留学生には、とくに私立大学では奨学金を授与するところも増えてきました。
入学して1年目に好成績を修めたら、2年目からは奨学金を出すという大学も少なくありません。
在学生のプロフィールとは、
・男女比
・人種構成
・留学生の割合
・州外からの学生の割合
・Full-time Studentsの割合
を指します。
最近では女子の大学進学率がめざましく伸びてきていて、アメリカの7割の大学では男子よりも女子の出願者が多いそうです。
とはいうものの、ほとんどの共学大学では、男女の数のバランスがとれています。
工科大学に男子が多いのは日本と同じです。
人種構成は、アメリカの大学では、
・Native American :ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)
・African American :アフリカ系アメリカ人(いわゆる黒人)
・Asian American :アジア系アメリカ人
・Hispanic American :ヒスパニック系アメリカ人
の4種(これらを総称して「マイノリティ」といいます)の割合が公表されていて、これら以外はすべて白人か留学生ということになります。
第I章で、カリフォルニア州のいくつかの大学の人種構成を見ましたが、西海岸の大学のマイノリティの多さは顕著です。
マイノリティの多いことが悪いわけでは決してありませんが、総じて見た場合、経済・教育レベルが低いのは黒人とヒスパニック系であるのは統計的な事実です。
黒人中心、ヒスパニック系中心の教育をする大学もあり、これらの大学では人種的な偏りが見られます。
たとえば「黒人音楽が好きだから」というだけでこうした大学を選ぶのは望ましくありません。
だいたい白人が6〜9割を占めるのが、標準だといえそうです。
逆に、白人が100%近く在学するというような大学は、保守的・排他的な校風がちょっと心配されます。
なお、都会の大学ほどマイノリティの割合が高く、田舎に行くほど白人の学生が多くなります。
アメリカの大学は日本の大学に比べて留学生の数が多く、だいたいどの大学でも3〜6%くらいを留学生が占めます。
何しろ「多様化」がアメリカの大学のキーワードです。
カリフォルニア州やニューヨーク州、マサチューセッツ州は留学生にとくに人気が高く、20〜30%にも及ぶ大学すらあります。
留学生があまりに多すぎるのもいかがかなものかと思いますが、いろいろな国の人と親しくなれるのは、アメリカ留学の大きな魅力でもあります。
多くの大学では国別の留学生の数までは公表していませんので、日本人の数が気になるという人は、直接大学に問い合わせるのがいいでしょう(それでも必ずわかるわけではありません)。
(Open Doors2009より)
大学名 | 留学生数 | 総学生数 |
University of Southern California | 7,482人 | 33,747人 |
New York University | 6,761人 | 50,917人 |
Columbia University | 6,685人 | 25,414人 |
University of Illinois -Urbana-Champaign | 6,570人 | 41,495人 |
Purdue University -Main Campus | 6,136人 | 40,090人 |
University of Michigan -Ann Arbor | 5,790人 | 41,028人 |
University of Texas -Austin | 5,703人 | 50,006人 |
University of California - Los Angeles | 5,590人 | 38,263人 |
Boston University | 5,037人 | 31,766人 |
Michigan State University | 4,757人 | 46,648人 |
※学生数は大学と大学院の合計。
とくにここに挙げる大学はすべて総合大学で、大学院生がかなりの数を占めることを注記しておきます。
当然、州立大学は州内出身者がほとんどを占め、私立大学は州外からも入学生を多く集めています。
州外からの学生の割合が10%に満たない場合、その大学は、基本的には州民のための教育をしているといえるでしょう。
私立大学は「多様性を重んじる」という理由から、できるだけ州外にも目を向けます。
留学生から見ると、州外からの学生が多く、学生のバックグラウンドがバラエティに富んでいるほうが、居心地がいいと言えそうです。
アメリカの大学生のうち、学生が本分である人を"Full-time Students"と言い、働きながら通っている人のことを"Part-time Students"と言います。
Full-time Studentsはいわば「正規の学生」で、寮生活をして1日24時間、学生として過ごしますが、Part-timeの学生は自宅から車で通い、夕方とか週末とかのクラスをとるだけです。
コミュニティ・カレッジはPart-timeの学生が多く、リベラルアーツ・カレッジではFull-timeがほとんどです。
留学生がめざしたいのは、Full-time Studentsの割合が高い大学です。
Part-time Studentsが多い大学は、働きながら通っている人が多く、また学生の年齢層も高いので、高校を卒業したばかりの人にはなかなか溶け込みにくいでしょう。
そのほか、大学選びにおいては以下の事柄にも気をつけます。
プレイしたい種目のスポーツチームがあるか、興味を抱いているサークル活動があるか等をチェック。
(Peterson's 2010、College Board 2009より)
大学名 | University of North Texas 南部州立大学 |
Lafayette College 東部リベラルアーツ・カレッジ |
New York University 東部私立総合大学 |
男/女比 | 46/54% | 52/48% | 38/62% |
Native Arnerican | 1% | 0.1% | 0.2% |
African American | 14% | 5% | 4% |
Asian American | 6% | 4% | 19% |
Hispanic Arnerican | 13% | 5% | 8% |
留学生 | 2% | 7% | 11% |
州外からの学生 | 3% | 79% | 72% |
Full-time Studentsの割合 | 78% | 98% | 93% |
寮があるのが大前提。
入寮率もできるだけ高い大学のほうがいいでしょう。
Retention (リテンション)とは前述したように、大学に1年在学した学生が、2年生としてその大学に戻ってきた率のことをいいます。
Retentionが高ければ、その大学のサポートがしっかりしているし、また学生の満足度も高いということになります。
逆に、Retentionが低い場合は、退学してしまったり他大学に転校してしまったりした学生が多い、つまり大学のサポートがよくない、学生の満足度が低いということがうかがえます。
全米的に見ると、四年制大学の入学生の4人に1人が、1年目で脱落しているようです。
リベラルアーツ・カレッジなど私立大学や名門大学は、州立大学に比べてRetentionが高いというのが一般的な傾向です。
大学によっては卒業率 (Graduation Rate)も公表していますので、チェックしましょう。
校風(リベラル/保守的)や宗教性も見るべきポイントではありますが、日本人にはなかなかピンとこないと思います。
アメリカの高校生は、家族が所属する宗派とかかわりのある大学を選ぶこともあります。
リベラルアーツ・カレッジには、キリスト教の宗派(ルーテル派、メソジスト派など)が母体となっているものが多くありますが、とりわけ宗教色が濃いわけではなく、宗派にかかわらず(もちろん無宗教であっても)入学生を受け入れています。
気をつけたいのは宗教色のきわめて強い大学です。
規模が小さく、またその名前にHoly、Union、Bible、Seminaryなどが付く傾向がありますが、すべての大学がそうであるわけではありません。
いよいよ出願する段になってこれらのことが気になったら、大学に直接聞くか、カウンセラーに確認しましょう。
さて、以上に掲げたポイントをもとに志望校をピックアップするには、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。
アメリカの高校生はガイダンスカウンセラーに相談しますし、日本の高校生もカウンセリングを受けるのが望ましいのは言うまでもありません。
それでも、インターネットもある程度は活用できるでしょう。
アメリカのすべての大学がホームページを設けていますが、かといって最初から大学のホームページを1校ずつ調べていては時間ばかりかかってしまい効率がよくありません。
そこで役立てたいのが、以下に紹介する大学検索サイトです。
すべて英語で書かれていますが、慣れればある程度は使いこなせるようになると思います。
これらのWEBサイトでは、規模や種類、地域、学生数、学費、専攻などにより、全米の大学を条件検索できます。
サイトによっては自分の高校のGPA、SATなどのテストスコアを入力すると、挑戦校・実力相応校・すべり止め校の3レベルに分けて大学が自動的に選ばれるものまであります。
こうした大学検索サイトのみで志望校を決めるのは性急すぎますが、それでもある程度の方向性は見えてくるでしょう。
試みに、College Boardのサイトで、
・種類:四年制私立大学
・地域:ニューイングランド地方
・学生数:2,000人以下
・立地:田舎
・専攻:ビジネス
・寮:必ず入寮できる
という条件で検索してみると(ほかにも条件項目はたくさん設けられています)、以下の7大学が検索されました。
Atlantic Union College
Bennington College
Colby-Sawyer College
Franklin Pierce College
Green Mountain College
Holy Apostles College and Seminary
New England College
このうちAtlantic Union CollegeとHoly Apostles College and Seminaryは宗教色のきわめて濃い大学ですが、ほかは良質の小さなリベラルアーツ・カレッジです。
いずれも日本人留学生が溶け込みやすい、フレンドリーでアットホームな雰囲気のキャンパスをかまえています。
しかし最初から5校に絞るのは好ましくありません。
地域を広げるとか、学生数をもう少し増やすとかして条件を緩めて、だいたい20大学くらいをピックアップしましょう。
複数の大学検索サイトを併用することで、よりたしかな選択ができるはずです。
College Board | https://www.collegeboard.org/ |
College View | http://www.collegeview.com/ |
Peterson's | http://www.petersons.com/ |
The Princeton Review | http://www.princetonreview.com/ |
US News | http://www.usnews.com/education |