個々の大学は、「今年の入学生はこんなグループにしたい」というイメージをまずつくります。
多くの大学は多様性を重視していますから、大学の地元だけでなく、全米から、また全世界から優秀な学生をとりたいと望んでいます。
ほとんどの大学にとって留学生は大歓迎です。
入学させる学年全体のバランスも考慮に入れます。
「バランスのとれた人間」よりも「バランスのとれた集団」を望むわけです。
留学生のうち日本からは○人、と国別・地域別の定数を設けている大学もあります。
また、大学側の事情が、合否に影響することもめずらしくありません。
たとえば大学のほうで生物学科をもっと充実させたいという場合、生物が得意な学生を多くとろう、ということがありますし、バスケのチームを強くしたいので、バスケットボールの選手を優先的に入学させよう、ということもあり得ます。
アートセンターを改築したばかりなのでアート専攻の学生を増やしたい、ということもあるでしょう。
またこれは頻繁にあることではありませんが、女子大が共学の大学に生まれ変わったばかりのときには、男子には広い門戸が開かれます。
大学によって、合否の決めかたはさまざまです。
個々の大学で合格基準は異なりますし、アメリカの高校生から見ても合否決定のプロセスは"Mystery"だといいます。
たとえばハーバード大学には約29,000の、Boston Universityでは約38,000もの願書が、送られました(2009年度)。
一方、リベラルアーツ・カレッジのMarlboro Collegeの年間出願者数は約390人でした。
おのずと入学審査のプロセスは異なります。
基本的には、アメリカの大学は「落とそう」という姿勢ではなく、一人ひとりの願書と書類をていねいに読み、可能性を探ろうとします。
決して不合格を決めるための審査ではありません。
むしろ、あなたのよいところを見いだそうとするのです。
志願者それぞれの置かれた状況がしっかり考慮され、フェアな審査をしてくれます。
一般に大きな大学(とくに州立大学)では、まずGPAやテストスコアなどの数値によるふるい分けがされ、そのうえでエッセイや推薦状などが読まれます。
マンモス大学ではふるい分けは機械的に行われ、最近ではコンピュータが使われます。
一方、私立大学や小さな大学では、エッセイが真っ先に読まれることもめずらしくありません。
最近では州立大学でも、これまでの「数字偏重」を反省し、さまざまな観点から出願者を審査するようになってきました。
2002年にカリフォルニア州の州立大学が、「合否を決める14のカテゴリ」を打ち出し、多角的な審査をすることを公表。
この14のカテゴリには、高校の成績やテストスコアのほか、高校の個々の科目の内容やレベル、学習内容がいかに人生に生かされているか、ユニークな才能などが含まれています。
これを皮切りに、全米の州立大学が、私立大学をお手本とした審査プロセスを導入するようになってきています。
アメリカの大学の合否は、Admissions Officeという部署で決められます。
Admissions Officeは「入学管理事務所」というべきもので、一人ひとりの出願者をさまざまな角度から審査する専門の部署です。
日本の大学の教授会とは異なり、Admissions Officeのスタッフは、「入学審査をつかさどるプロフェッショナル」です。
まず出願者の書類が個別にファイルされ、個人情報がコンピュータに入力されます。
そしてそれぞれのファイルを、Admissions Officeのスタッフまたは"Reader"と呼ばれるパートタイムのスタッフが検証し、個々の出願者を、
・明らかに合格
・明らかに不合格
・合格か不合格か決めかねる
という3タイプに分けます。
University of Virginiaでは、9人のReaderが、一人あたり35通もの願書を毎日読んでいるそうです(Peterson'sより)。
上の3タイプのうち、「明らかに合格(あるいは不合格)」というタイプについては、審査がそれで終わるか、Admissions Officeの責任者が一応は目を通して、最終判断が下されます。
「合格か不合格か決めかねる」というタイプ(実際にはこのタイプが一番多いのです)については、次に"Selection Committee"と呼ばれるプロのグループにより、ディスカッションが行われます。
小さな大学ではすべての出願者についてディスカッションがされ、数字だけでなく、課外活動、そして「熱意」や「可能性」をも含めて検討されます。
とくに議論されるのが、「この学生を入学させることで、大学にどのような影響を与えるか」ということです。
このようなプロセスを踏むので、アメリカの大学では合否の決定にかなりの時間がかかります。
たとえばDuke Universityは3か月たっぷりかけて審査をしますし、ほかの大学でも1〜2か月は費やします。
合否の通知は、通常、郵送されます。
送られてきた封筒が厚ければ合格、薄っぺらだったら不合格――とも限りませんが、ドキドキする瞬間です。
最近ではEメールで合否を知らせてきたり、出願者が大学のWEBサイトにアクセスしてみずから合否をチェックできるようになってきてはいますが、いまだ郵送のほうが一般的です。
秋学期の入学の場合、だいたい3〜5月くらいに知らせが来ます。
提出した書類に不備があると、入学審査の対象として見なされないこともあるので(また大きな大学では書類をなくすこともけっこうあるので)、合否の知らせがあまりに遅い場合は、大学に直接問い合わせましょう。
先述のように、願書と必要書類を送ったら、Eメールなどで「受け取りました」という通知が来るのが普通です。
願書を出して1か月以上も音沙汰がなかったら、問い合わせたほうがいいでしょう。
また出願書類を郵送するときには、書留郵便など、記録の残るかたちで送るというのも、大切なポイントです。
さまざまな角度から出願者を審査し、入学のチャンスを与えようとするアメリカの大学では、「入学の交渉」が合格の決め手になることもめずらしくありません。
アメリカの高校のガイダンスカウンセラーも、こまめに大学にコンタクトして自校の生徒を売り込みますし、カウンセラーによるネゴシエーションが合格を決定づけた例がいくつもあります。
不合格になった場合でも、たとえば英語力が原因であったならば「9月の入学までには英語力をもっと上げますし、夏には集中講座に通い必要な英語力を身につけるので、入学のチャンスを与えてください」というような交渉を粘り強くすることで、大学のほうも再考してくれるなんてこともあり得ます。
交渉が必ず功を奏すとは言えませんが、ダメでもともと。
アメリカの高校生も、わざわざキャンパスまで出かけて行って、「私を入学させないと損するわよ!」と書いたプラカードを首からさげてアピールをしたなんて人もいるくらいです。
また、3学期の成績が出る前に不合格になった場合、3学期の成績が上がったら、再考してもらえることもあります。
学校の成績が上がったということは、アメリカの大学にアピールできる最も強い武器です。
逆に3学期の成績が著しく低迷した場合、合格が取り消される可能性もあるので、注意しましょう。