斉藤君は東京大学の2年生。
大学生活も1年たった頃から何かが物足りないと思えて、高校時代に漠然と考えていたアメリカ留学についてだんだん真剣に考えるようになっていました。
斉藤君は高校2年生の後半にご両親と高校の先生に大学進学について相談した時、アメリカの名門大学に進学することも視野に入れたいと打ち明けていました。
しかし、斉藤君の高校は日本の有名国立・私立大学への合格者を数多く輩出する名門進学校で、「留学は東大に入ってからでも遅くない」などと言われ、斉藤君は日本の有名大学をめざし、見事東大に合格しました。
東京の大学生活も1年が経ち、今は一般教養の科目を主に履修し、これから経済学を専攻する予定とはいうものの、将来何の仕事がしたいのか、どんな人生を歩みたいのかさっぱり想像できないし、夢も描けません。
そんな時、高校時代に一度漠然と考えたアメリカ留学が頭をよぎりました。
そこで、アメリカ留学についての基礎知識を得るため、大学2年生の5月に留学研究所の講演会に参加しました。
そして「アメリカの大学は入学するのは易しいが、卒業するのは難しい」とよく聞いていたけれど、名門大学ともなると、やはり入学するのも容易ではないということがわかりました。
そして同時に、ますますアメリカの大学に挑戦してみたいと久しぶりになんだかワクワクしてきました。
とにかくカウンセリングを受けてアメリカのアイビーリーグなどの名門大学に入れるかどうか聞きたいという思いで、講演会の1週間後に高校3年間と大学1年間の成績表のコピーを持って、留学研究所を訪れました。
高校の成績の評定平均は5段階評価で4.4、大学の GPAは3.5です。
カウンセリングを通じて、再認識したことは、学業成績が非常に重要ということ、勉強だけでなくさまざまな経験をしてそこから人間としてどのような深みを増してきたかを出願書類の中で説得力をもって表現することが必要ということ、TOEFLやSATのテストスコアが良いだけではなかなか名門校に入るのは難しいということでした。
日本で最も難関な東大に入っているのだから、アメリカのアイビーリーグの1校くらいにはそれほど苦労なく入れるだろうと高を括っていましたが、かなり難しそうです。
しかし、だからこそ挑戦したいという気持ちが強くなりました。
カウンセラーは、斉藤君にTOEFLを受験してくることと、東大を辞めてまでアメリカ留学をすることをご両親が同意してくれるのであれば、再度カウンセリングに来るようにと伝えました。
斉藤君はご両親ときちんと向き合って話し合いました。
東大にこのままいるのもそれなりに楽しいけれど、今後アメリカ留学を通じてもっと自分自身を磨き、最終的に何の職業を選ぶかはわからないけれど、グローバルな社会での競争力を身につけたいということを一生懸命説得しました。
ご両親は息子が東大に入ったことは非常に誇らしく思っているものの、決して東大卒という学歴が息子の将来を約束してくれるものではないことや、世の中の社会システムの激変などをみていると自分自身に競争力をつけておくことの方が大切なのではないかと考えるようになりました。
ただし、最終的に東大を辞めるということになっても、休学手続きをして留学中の最初の1年間を休学扱いにしておくということを家族で決めました。
このような背景を経て斉藤君は7月から本格的に留学準備をスタートしました。
6月にすでに受けたTOEFLのスコアはちょうど80点です。
初めてのTOEFLでも高得点を取ってきたのはさすがです。
その後TOEFLを3回受け、10月には102点になりました。
カウンセラーは、アイビーリーグ校やリベラルアーツ・カレッジのトップ校に出願することを想定し、編入学でもSAT Reasoningテストを受けることを指示しました。
10月、11月、12月に受験し、最も良いスコアが、数学780点、読解560点、ライティング520点でした。
TOEFLやSATなどのテストに関しては、だんだんコツがわかり、勉強方法も工夫しながら取り組むと、スコアにも確実に成果が表れました。
しかし、苦労したのはエッセイでした。
斉藤君がエッセイの下書きをカウンセラーに見せると、カウンセラーは「読み手を喜ばそうと思って書いたエッセイはまったくおもしろくない」とか、「優等生が書くお定まりのパターンになっている」といった結構辛辣な評価をくだしました。
カウンセラーは何度も斉藤君と直接やりとりをし、ネイティブチェックを含め、すべて仕上げるために3ヶ月ほどかかりました。
大学の教授と高校の先生から日本語でいただいた推薦状3種も、斉藤君の学力、知識、経験、スキル、資質、今後可能性などが十分に表われるよう工夫して翻訳しました。
経済学を希望専攻とし、カリキュラムや大学の教育理念、大学に関する詳細などをオンラインの大学カタログでよく読み、カウンセラーの経験による合否に関するアドバイスも踏まえ、出願した大学は、Yale University,Columbia University, Georgetown University,New York University,Swarthmore College,Carleton College, Haverford Collegeです。
出願校数も多くすべてが難関校なので、出願書類も多く非常に煩雑で、細かいことにも気を配る必要があります。
時間管理をきちんと行い、出願締切日にタイミングよく願書や必要書類を発送し、出願後も各大学と審査の進捗状況の確認も行いました。
結果として、合格した大学は、Columbia University,New York University,Carleton College,Haverford Collegeの4校です。
入学校はアイビーリーグの1校Columbia Universityに決定し、見事、最初の願望であったアメリカの名門校に入学を果たしました。
斉藤君は東大の2年次が修了した時点で休学届けを提出しました。
取得した単位数は66単位あります。
このうち、Columbia Universityでは、54単位認められました。
少し目減りしたのは、英語の科目の単位が認められなかったことや、2単位分の科目の扱いによると思われます。
アメリカの大学は1科目3単位というところが多く、日本の大学の1科目2単位という単位をどのように換算するかということは大学の裁量によります。
しかしそれでも、東大の教養課程で履修した科目はアメリカの大学の一般教養科目を共通しているものが多かったため、わりと効率的に単位が認められたのも事実です。
斉藤君は憧れのアイビーリーグ校で優秀なクラスメートと肩を並べ留学生活を送っていますが、この充実感を実際に体験するともう東大には戻らないと確信しています。
休学届けはいずれ退学届けに変わるでしょう。